クロベンケイガニ Orisarma dehaani

エビ目 ベンケイガニ科
2013年度版を参照する
種の特性と生息状況
甲幅、甲長とも3cmほどの大きさで、ほぼ正四角形。額部は下垂して中央部が窪み、前縁は背面からは見えない。甲域は明瞭で、全体として凹凸が強く、また、鰓域上に斜めの条線が多数平行に走っている。甲の前側縁には切れ込みはなく、前端が眼窩外歯として尖っている。はさみ脚は強大で、各節は顆粒で密に覆われている。歩脚は幅広く、各節ともやや長い黒色剛毛で縁取られている。長節前縁の末端近くに1歯ある。房総半島以南の太平洋沿岸、男鹿半島以南の日本海沿岸に分布し、河口域に生息する。水から離れて陸上へ進出することはないが、流域にそって遡上し、都心近くの流域でも発見される。
生存を脅かす要因
海岸開発による生態系の改変。生息環境は水質汚染や河川改修、干拓などの影響を直接受ける場所である。主たる生息地であるヨシ原の干潟は東京都沿岸では限定的である。
特記事項
河口の沿岸域、ヨシ原など軟泥地の窪みなどに生息する。地方によっては、海岸近くの水田に侵入し、田植え後の稲が抜かれるなどの被害がある。
執筆者
武田正倫
2006年
関連文献
酒井恒 (1976) 日本産蟹類. 講談社: xxix+773pp. (英語): 461pp. (日本語): 16pp.+251pls.(図版)
武田正倫 (1982) 原色甲殻類検索図鑑. 北隆館: vi+284pp.
豊田幸詞 (2019) 日本産淡水性・汽水性 エビ・カニ図鑑. 緑書房: 339pp.
豊田幸詞・関慎太郎 (2014) 日本の淡水性エビ・カニ 日本産淡水性・汽水性甲殻類102種. 誠文堂新光社: 256pp.
三宅貞祥 (1983) 原色日本大型甲殻類図鑑 (Ⅱ). 保育社: viii+277pp.
Schubart, C. B. and Ng, P. K (2020) Revision of the intertidal and semiterrestrial crab genera Chiromantes Gistel, 1848, and Pseudosesarma Serène & Soh, 1970 (Crustacea: Brachyura: Sesarmidae), using morphology and molecular phylogenetics, with the establishment of nine new genera and two new species. Raffles Bulletin of Zoology, 68: 891–994.