ハチジョウベニシダ Dryopteris caudipinna

シダ植物 オシダ科
種の特性と生息状況
本州(関東地方以西)、四国、九州に分布する常緑性シダで、日本固有種である。日本産ベニシダ類の大半は三倍体無配生殖型であるが、本種は珍しい二倍体有性生殖型であり、1胞子嚢あたりの胞子数が有性生殖型で64個である。形態的にはベニシダに類似するが、羽片、小羽片が細長くなる傾向が強く、葉質はしばしば薄く繊細である。東京都島嶼部においては普通に分布するが本土部では珍しく、古寺境内の林内で20個体程度の小群落が見つかっているだけである。
生存を脅かす要因
本種の生育地は竹林にあり、竹の間伐・管理放棄により、容易に群落が消滅する恐れがある。一方、竹を皆伐してしまうと乾燥化し生育状況が悪化してしまう恐れがあるので、現状維持が推奨される。
特記事項
本種とマルバベニシダの交雑によって生じたと考えられるベニシダとは外見的な識別が難しく、自生地が見逃されている可能性が高く、都内全般における実態調査が必要である。なお、本種同定のための1胞子嚢あたりの胞子数計測は、6~7月が最適である。
執筆者
堀清鷹
稲城市 2016年6月19日
関連文献
堀清鷹(2017)東京都稲城市でハチジョウベニシダを発見. 日本シダの会会報, 4: 27.
Hori, K., Zhou, X.-L., Shao, W., Yan, Y.-H., Ebihara, A., Wang, R.-X., Ishikawa, H., Watano, Y. and Murakami, N.(2018)Hybridization of the Dryopteris erythrosora complex (Dryopteridaceae, Polypodiidae) in Japan. Hikobia, 17(4): 299-313.