ハルゼミ Terpnosia vacua

カメムシ目 セミ科
2013年度版を参照する
種の特性と生息状況
翅端まで30~37mm。体は褐色で黄白色の微毛に覆われる。針葉樹に依存する種であり、特に明るいマツ林を好む。成虫は5月頃に発生する。本州から九州にかけて分布する。都内では区部から多摩部にかけて記録されている。神津島からも1例のみ記録されている。
生存を脅かす要因
土地開発、管理放棄、植生遷移。都内では貧栄養な立地のアカマツ林が主要な生息地となっているが、各種開発に加え管理放棄や植生遷移、マツ枯れによるアカマツ林の衰退に伴い減少著しい。
特記事項
過去には区部から多摩部にかけて広く生息したようであるが区部では絶滅、多摩部の台地でもほぼ見られなくなった。丘陵地においても局地的に見られる程度となっており、合唱が聞こえるような生息地は極めて限られている。本種の生息に適したアカマツ林は今後より減少すると考えられる。一方、植栽されたヒマラヤスギで発生している例や、奥多摩山地では稜線のモミ・ツガ林に生息している例もある。都立東大和公園では本種を対象としたアカマツ林の保全再生の取り組みがなされている。
執筆者
須田真一
2005年
関連文献
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