アカハナワラビ Botrychium nipponicum

シダ植物 ハナヤスリ科
2013年度版を参照する
種の特性と生息状況
全国の主に落葉樹林下に生育する冬緑性シダ植物。胞子葉は高さ20~30cmで直立し、冬期には枯れて倒れる。栄養葉は長い柄を持ち、小型のものは三出複葉、大型のものは3回羽状複生となる。裂片の縁に不規則な鋭鋸歯があり、葉の表裏とも、冬期に著しく紅変する。また、葉脈に沿ってカスリ模様が見られるのも特徴である。都内では、多摩部の丘陵地から低山地にかけて疎らに分布するほか、区部でもわずかに現存が確認されている。
生存を脅かす要因
森林伐採、土地造成、管理放棄、遷移進行・植生変化、シカの食害。特に冬期は、紅変した植物体が周囲の落ち葉に紛れて見落としやすいため、林床管理作業や通行の際に気付かずにダメージを与える恐れがある。
特記事項
保全にあたっては、個体へのマーキングやシカ保護柵の設置が有効である。南多摩では、従来確認されていなかった地点における新産地の発見が相次いでいる。分布量増加の傾向があるものの、生育環境を極力維持していくことが望ましい。なお、近縁のオオハナワラビも冬期に紅変することがあり、種間雑種群も含めて同定は慎重に行う必要がある。
執筆者
小林健人
八王子市 2017年12月29日
関連文献
海老原淳・松本定・岡武利(2019)自然教育園産シダ植物の再評価~山手線内のシダ植物相との比較から~. 自然教育園報告, 51: 179-190. 国立科学博物館附属自然教育園.
小林健人(2014)八王子のシダ. 八王子市市史編集委員会 編. 新八王子市史 自然編: 251-265. 八王子市.
芹沢俊介(1974)東京都のシダ. 文化財の保護, 7: 13-33. 東京都教育委員会.